営業技術2部 海外営業グループ課長
征矢紫郎



 当社では、これまでに一般的なMサイズのPCBに対応するTSP-500と、大型PCBに対応するTSP-1000という二つの画像認識装置付クリームはんだ印刷機を、世に送り出してきました。その過程で、PCBアセンブリのSMTにかける時間を短縮させる為、印刷工程の高速化という要望がされ、これに応えるため、「より高速で、より高い性能と機能を備えた、世界一小さな印刷機を」というコンセプトで、新しい印刷機TSP−550を企画しました。
TSP-500が高性能で安定した実績があっただけに、当初は社内でもこの再開発の是非に対する不安もありました。しかし、ニーズを先取りしてこその企画開発でした。

 ユーザーニーズの一つは、連続印刷過程での高性能なメタルマスクのクリーニングでした。クリームはんだはメタルマスクに充填されPCBに転写されますが、クリームはんだの転写率を上げるため、これを一定の間隔でクリーニングしなければなりません。当社技術者は、多くのユーザーの現場に出向き、オペレータがメタルマスクをどのような方法で、どのくらいの頻度でクリーニングしているかを徹底的に分析しました。

 その結果、私たちがたどりついたのが、他メーカーには無いX-Yクリーニングという方式です。縦拭き、横拭き、回転拭き、斜め拭きの4種類をこなし、しかもその頻度や、クリーナーの往復によるクリーニング方法の変更、ドライクリーニング、ウエットクリーニングの選択もオペレータが自在に行なえます。

 オペレータの感性も取りこんだこのクリーニング方式は、転写率向上に貢献しただけにとどまりません。クリーニング自体を高速化したことにより、PCBアセンブリのはんだ印刷工程を圧倒的に合理化することに成功しました。

 クリーニングがいかに早く的確に行なえても、タクトタイムの高速化に対するニーズに応えるには、印刷そのものもスピードアップしなければなりません。これがもうひとつの課題でした。

 これを解決するために私たちが行なったことは、2つあります。ひとつは、カメラとPCBストッパーを一体化させ、ライン工程に流れてくるPCBを止めたら、即座にカメラがPCBの基準マークの像を捉えられるようにしたこと、もうひとつは、印刷機に入ってくるPCBと出ていくPCBを、同時に動かす工夫でした。さらに、従来の高性能な低印圧スキージ技術に磨きをかけ、クリームはんだの転写率を飛躍的に高くすることにも挑みました。

 こうして、クリームはんだ印刷で約13.5秒(弊社の基準基板サイズにて)、クリーニングで6.5秒、トータルでも20秒に満たない、クリームはんだ印刷と毎回クリーニングが可能なTSP-550が完成したのです。他社に類のないこの高性能と高機能を、機体巾900mmに満たないなかに収めたことが、ユーザーからの圧倒的な支持をうけています。
今後は、さらに新しいデバイスに対応し、一層のファインパターンと狭ピッチにも対応するなど、お客様の声(ユーザーニーズ)が詰まった印刷機を開発していくことが私たちの狙いです。